THE JR Hokkaido 2000年7月号
イラスト 中舘侑子さん


〔メロン

 北海道のメロンといえばまず思い浮かぶ夕張メロン。ラグビーボールのような形で外皮は黄色っぽくカボチャのようにゴツゴツしている。ネットは張っているけれども緑色をした高級メロンのイメージからはほど遠い。
 このメロンを手に持つだけでほのかに甘い香りが漂ってくる。包丁を入れて中のオレンジ色の果肉が見え始めれば、その香りが部屋中に発散されていく。
 果肉にスプーンをスーッと差し込み、口に含む。甘くてさわやかで、しかも濃厚な風味が口いっぱいに広がる。まさに北海道を代表する夏の味覚だ。
 夕張市はかつて石炭の町として隆盛を極めたが、山間部ということで農業は危機的だったという。ほかでは機械化に伴い耕地をどんどん広げたが、夕張は不可能。そこで野菜の栽培に活路を見いだそうと、部会をつくって長イモ、アスパラ、イチゴ、葉ものの野菜、そしてメロンに挑戦。どれか一つでも当たれば良かった。
 メロンの部会は大衆向けを目指して品種を開発。肉質と香りはいいが甘くない品種と高級ネットメロンの品種を掛け合わせて誕生したのが夕張キングだ。
 このメロン、風味は濃厚で高級メロン以上。ただし外見は良くなく、果肉の色もそれまでの常識だった緑系ではなくて赤系。しかも収穫後、数日で熟し、ドロドロになる。
 それでも自信満々の風味を武器に売り込みを開始。マスコミで取り上げられたこともあって札幌などに出回り始める。仕入れた小売店は日持ちしないので優先的に販売し、欠点が役立つこともあった。
 そしていよいよ宅配便時代が到来、夕張メロンの人気が急上昇し全国に拡大していった。
 さらに北海道ではメロンは赤肉というイメージが定着し、さまざまな品種が広く栽培されるようになっていった。
 同じ赤肉系でもタイプによって二つに分類できる。一方は夕張キングとそっくりな品種のグループ。もう一方は外見がまん丸く青肉系高級メロンに似ているグループだ。
 夕張キングのグループは舌触りが良くて香りが強い。一方のまん丸グループは果肉は少し固めで風味は夕張グループほど濃厚ではないが、日持ちする。
 たとえるならばイタリアンジェラードとカップ入りアイスクリームの違いとでも言えよう。

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