THE JR Hokkaido 2000年6月号
イラスト 中舘侑子さん


〔ラワンブキ〕

 十勝の池田駅でふるさと銀河線に乗り換え、約一時間走ると足寄駅。足寄町は松山千春さんのふるさととして有名だが、全国に数ある市町村の中で面積が一番広く、四国の香川県並みということでも知られている。
 ビッグな町、ビッグな歌手、そしてビッグがここにはもう一つある。
 足寄駅から北東へ車で約20分。川岸を歩いていくと何やら鬱蒼とした緑の茂みが現れた。中に分け入ると、この香り、筋が通った幹、そして天を覆う葉っぱの形。樹木のような大きさだがフキに間違いない。
 アイヌの伝説にあるコロポックルとは小人ではなく、フツーの人間だったのだろうか。
 足寄町螺湾地区。足寄川に螺湾川が合流する地点で、螺湾川は雌阿寒岳ふもとの五色沼と呼ばれるオンネトーから流れている。その流域に自生しているのがラワンブキだ。丈は2〜3メートルにも及び、直径は10センチにもなる。
 秋田県のアキタブキ(オオブキ)と同じ種だとされているが、大きさが段違い。
 秋田音頭では「秋田のくにでは、雨が降っても、から傘などいらぬ」とうたわれ、1〜1.5メートル程度。足寄音頭があるとすれば「足寄のくにでは、屋根などいらぬ」なのだ。
 それに秋田名物のフキは砂糖をまぶした菓子くらいにしかならず、染料など新たな用途を開発している段階らしい。一方のラワンブキは、河川の氾濫や採りすぎなどで自生のものは少なくなっているが、その代わり畑での栽培が盛ん。今や生産の主力は完全に畑へと移行し、さらにはビニールハウスを使った早出し栽培まで行われているほどだ。人気は高い。
 あれだけ大きな葉を支えているのだから、食べたらさぞ硬いのではと思いきや、じつに軟らかく、みずみずしい。味は普通のフキをまろやかにした感じだが、大きくて軟らかいだけに用途は普通のフキ以上に広がっている。栽培農家のグループでは新作料理も続々研究中だ。
 地元の螺湾郵便局と足寄郵便局ではふるさと小包でラワンブキを発送している。送られてきたフキをつないで立ててみると、気分はまさにコロポックル。

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