漁協再編の方向に疑問


地域の視点欠いた合併


 広域合併が進められている漁業協同組合の再編はこのままでいいのだろうか 。私が参加する北海道漁協研究会(任意団体)ではホクサイテック財団(北海道 科学・産業振興財団)の補助を受け、2年にわたって再編についての研究を行ってきた。かねてから漁協と農協との合併もあるべきだと考えていた私は、この研究の中で若い漁業者と農業者を対象にアンケート調査を行い、興味深い結果が得られたので報告する。

 対象としたのは根室市内の歯舞漁協の青年部員40人と根室農協の青年部員 全員の39人。回答を得たのは漁業者8人、農業者10人の計18人、回収率は全体で23%だった。

 全部のアンケート結果は紹介できないが、「もし具体的 な構想として農協と漁協の合併あるいは固い提携の話が持ち上がったとすると賛成しますか」という設問では、「賛成」5人、「どちらかといえば賛成」5人に対し、「反対」1人、「どちらかといえば反対」3人、「合併や提携する相手による」が4人で、賛成が反対を大きく上回った。この場合の固い提携とは「金融、共済事業など多くを共同化するが、形としては独立している形態」と規定した。

 漁協と農協の合併または固い提携によって期待されることを列挙し、選んで もらう設問では「農業と漁業が一体化することで環境保全がやりやすくなる」が11人で最も多く、「牛乳・畜産物と水産物を組み合わせた新しい加工品が商品化できる」が10人、「海から揚がるヒトデなどを畑の肥料にする、漁家が農家から土地を借りて作業する、これまでの牛乳、水産物だけでない新たな生産物を開発するなど個々の農家と漁家の経営面で新たな展開が期待できる」が9人と上位を占めた。「組織が強くなることで今後の高齢者問題など社会問題にも対処しやすくなる」は意外にも2人だけだった。

 若い世代は環境問題や今後の経営に危機感をいだき、新たな展開を求めていることが見て取れた。

「農協と漁協が合併 して新しい形となるには農水産業協同組合法といった新しい法律が必要になると思われます。法律の制定に賛成ですか」という設問では「賛成」が半数の9人、 「必要ない」が1人、「分からない」が8人だった。

 農協と漁協との合併構想はたしかに唐突ではある。しかし提示されれば、賛成する地域の若者がこれほど多い。現在漁協、農協とも広域合併が進められている。しかしそれは系統内の数合わせに終始し、地域という観点がまったく欠けていたのではなかろうか。

 今回の研究では私以外からも現在の漁協再編の方向に疑問を投げかける報告が相次いだ。このままでは、広域漁協が発足する一方で、 合併に合意できなかった漁協が取り残され、自然消滅を待つまま、という事態にもなりかねない。選択肢の幅を大きく広げた再編策を本気で考えていくことを強く主張したい。