私は北海道漁協研究会という任意団体のメンバーですが、ホクサイテック(
北海道科学・産業振興財団)の補助を受け2年かけて北海道の漁協の再編について研究し、1999年8月にその報告書をまとめました。 以下は私が担当した報告文です。 |
漁協と農協の合併または提携についての調査と考察
門脇啓二 1 素朴な疑問
同じ地域の住民であっても漁業者と農業者は意外に交流がない、ということ を筆者が意識し始めたのは、JAグループの月刊誌「家の光」で網走管内湧別町 の女性グループを取材した時だった。1993年(平成5年)春のことで、そのグループ「ゆうべつグルメ研究グループ」は農家と漁家の主婦たちが集い、農畜産物と海産物を使って独自の料理を創作していた。 その記事の一部を以下に引用する。(記述はすべて当時のまま) ◇ ◇ ◇ 網走管内湧別町の「ゆうべつグルメ研究グループ」は地場産品を使っておいしい料理を創造しようというサークルである。メンバーは農家と漁家の主婦15人で、農畜産物プラス海産物という幅広い材料を使って独自のメニューをつぎつぎに編み出してきた。 このグループは湧別町生活改善実行グループ協議会の一組織。ほかに農業経営について勉強する簿記学習グループ(52人)と本州から嫁いできた農家の主婦が集う、はまなす会(19人)とがあり、いずれも東紋東部地区農業改良普及所に事務所を置いている。 グルメ研究グループがユニークなのは農家だけでなく漁家の主婦も加わっている点。世話役の佐久間惠子専門普及員もこうした例はほかに聞いたことがないという。現在グループの会長を務める奥谷茂子さんが結成当時を振り返る。奥谷さんは漁家の主婦で、それまで農家との接点はほとんどなかった。 「漁協の婦人部の総会に片山寿美子専門技術員(現在、北見の専技室)をお招きして、高齢化社会のことなどいろいろ話をしていただいたときに、生活改善実行グループというのがあって、今年からグルメ研究 グループの活動が始まるので漁協婦人部の方も入りませんか、というお誘いがあったんです。それで仲間に入ってお料理が習えたらいいなって…。簡単な気持ちで入ったんです」 接点がなかったのは、話をうかがった酪農家の布目芳子さんも肉牛育成の藤本美智子さんも変わりはない。しかし同じ目的で参加してきた人々だけに、農家、漁家といった違和感はまったくなかったという。 ◇ ◇ ◇ この取材をしてからというもの、筆者は漁業と農業がともに盛んな地域で本当に漁業者と農業者の接点・交流はないのだろうか、と機会あるごとに漁業者や農業者に聞いてみた。そして接点・交流がない現実を実感できるまでになってき た。交流・接点はほとんどないと断言して良い状況なのである。 2 縦割りが壁をつくる 筆者の印象では、漁業者と農業者だけでなく同じ市町村内にある漁協と農協との接点・交流もほとんどなかった。市町村内の商工会、森林組合など、業界団体同士としてのつき合いがある程度である。 その一方で系統といわれる各連合会との結びつきは漁協、農協ともに強く、 「上部組織」と称して道レベル、国レベルまで強固に結びついている。そして、 その連合会も、漁協系統と農協系統との交流・接点はほとんどなく、市町村内の 各種業界団体の接点・交流と同じようなレベルのようだ。行政機関との関係も、漁協の場合、市町村の水産担当、支庁の水産担当、水産技術普及指導所、水産試験場などとの結びつきが強い。農協も同様だ。 そして行政や研究・普及機関なども水産分野と農業分野との接点・交流はほとんどない 。市町村職員や道職員が人事交流を行っているに過ぎない。系統以外の結びつきとしては、漁協や農協が生協や生協連合会などと個別に取り引きしている例が少しあるだけだった。 結局、漁業者や農業者、漁協や農協は系統内にしっかり組み込まれ、行政的にも水産、農政といった縦割り制度の中に組み込まれてきたことになる。 その結果、漁業者や漁協職員は漁協系統内のことには興味を示すが、同じ地 域内の産業である農業、農業者、農協にほとんど興味を示さず、接点・交流も求 めなかった。農業者や農協職員も同様だった。同じ地域に存在しているとはいえ 、漁業と農業の間にはかつてのベルリンにあったような高く強固な壁がつくられていたといえよう。 しかし本研究会会員には、かつて道内でも漁協の建物に農協の看板を掲げた例があったことを知る人がいる。また同じ人が漁協組合員と農 協組合員を兼ねていた例は多かったともいう。道外では漁協と農協の組合員を兼ねる例は今でも多いとされるが、北海道では漁業、農業がそれぞれ自立し、それぞれが系統とともに発展してきたが、その過程で地域内に壁をつくる結果にもなった。 3 合併論議も系統内のみ 現在、漁協同士、農協同士の合併が道指導連や北農中央会を世話役にして盛んに行われている。しかし選択肢はそれだけなのだろうか。そんな疑問をいだいた筆者は北海道新聞の「私の発言」欄に投稿し、1997年(平成9年)4月2 0日に掲載された。以下はその投稿文である。 ◇ ◇ ◇ 農協と漁協との合併も選択肢 農協、漁協の広域合併が近年進んでいま す。先日は羊蹄山周辺の八つの農協が合併し、販売額で道内最大のJAが誕生しました。漁業でも桧山管内の漁協が一つになるなど合併が進んでいます。 合併には数々のスケールメリットがあるでしょう。事務が合理化できる、設備投資でさらに省力化できる、販売量が大きくなることで産品をブランド化し、 市場への影響力を高めることができる、など。また金融機関としての基礎を確かなものとするため、大規模化が不可欠にもなっています。 近年は交通事情が良くなって広域化が苦にならなくなったのは事実です。合併がねらい通りの成果をあげるケースは多いと思います。しかしそうではないケ ースもあるのではないでしょうか。 たとえば道北や道東など、となりの農協、漁協までかなり距離がある場合など、無理して合併すればこれまで親しんできた組合が遠い存在になってしまいかねません。自分たちの組合という意識が薄れ、協同組合そのものの意味も希薄になっていくかもしれません。 そこで私はこれまでの農協、漁協の合併という道 のほかに新たな道を考えていくことを提案します。たとえば農協と漁協の合併です。遠い同業者と組むよりは近くの異業者と組もうというわけです。幸いに金融は同じ農林中金につながっています。さらに森林組合や生協との合併も考えられ ます。合併せずに今のままでいたい農・漁協は金融部門だけ地元の信金や信組などに肩代わりしてもらう方法もあるでしょう。法律が必要なら国会でつくってもらえばいいのです。 また交通事情が許されるなら隣合った組合と合併せずに、気の合った組合が自由に合併してもいいと思います。ブランドを強化するのは同業者との競争に勝つためですから、そのために合併相手を選択し、お互い切磋琢磨することも自由です。 ところがそうした発想はこれまでほとんど出てきませんでした。農業は農業系統、漁業は漁協系統の中だけで発想し、仲間内の組織をいじるだけで外へ踏み出すような発想がなかったのです。行政もしかりです。 地域の合理的な発展を考えるなら、系統、行政の縦割りを打破することも視野に入れなければなりません。市町村の職員なら様々な分野を担当するので、異業種組合の合併といった発想もできるのではないでしょうか。 ところがある道庁職員は、結局はカネを出すところが強く、もらう方が弱くなる、と言ってました 。本来行政マンに上も下もありません。市町村職員の豊富な行政経験を生かし、勉強会などを重ね、新たな展開の方向を考えていけば、地域の組合のいろいろな将来像が見えてくるのではないでし ょうか。 農協の広域合併も結構。漁協の広域合併も結構。しかしそれだけでなく別な選択肢も考えていくべきだというのが私の主張です。 ◇ ◇ ◇ この投稿では目に見えるような反響はなったが、そのあと筆者が会った複数の親しい漁協職員は共感していた。漁協と農協との合併ではなく、合併しないで現在のままで生き残りの方策を考える、という部分に共感したようだ。漁協と農協との合併という発想は突飛すぎたといえる。 3 地域の漁と農が連帯する発想 しかし、筆者が投稿したころ、地域内の漁業と農業との接点を求める動きは各地で起こりはじめていたのである。 1997年(平成9年)の7月17日発行の水産業界紙「水産情報」による と、1996年の春に斜里町で漁協と農協の共同組織「食海土shari企画」が発足した。斜里第一漁協とJA斜里町の理事、参事、組合職員で構成され、一次産業、そして地域の活性化という理念が旗印だという。企画の立案や支援、情報交換や他地域との交流、そして地場産品のPRなどの活動をしていく。前年からは青森県のJA弘前との交流が始まっており、札幌、東京などで消流宣伝活動を展開する予定だ、とある。 同じ1997年10月30日発行の日本農業新聞北海道版では「21世紀への選択 第1部 各界からの提言」という連載企画に、木を植える運動に取り組む根室地区漁婦連会長の大橋ヒサ子氏(別海町)が登場、農家との連携を訴える発言をしている。その一部を紹介すると。 ◇ ◇ ◇ 「漁業の側から見ると、本当は川のふちくらいは木を残してほしかったんです 。でも、酪農家にしてみれば、水くみは大変だったろうし、川の近くから開けていくのは無理のない話だと思います。農家の人の気持ちも分かるんです」 「4年前からは町が中心になって、農協、漁協、森林組合など、地域ぐるみで運動に取り組んでいます。農家の人たちも随分参加してくれるようになりました。こちらからお願いしたわけでもないのに『みんなで植えよう』と集まってくれた時には 、本当にうれしくて涙がこぼれました」 「浜の母さんが農業のことを、農家の母さんも浜のことに関心を持つようにな りました。これが今の時点で言える唯一の、しかし、最も貴重な運動の成果かな 、と思っています。農業も漁業もそれだけではやっていけない時代です。第一次産業同士、今以上に互いに手を携えていくことが必要ではないでしょうか」 「今、浜はサケの最盛期です。私のところのサケは、最上級のもので大変おい しいです。味覚の秋、農家にもジャガイモなど、たくさんおいしいものがあるで しょう。そこで提案があります。おいしい芋と秋味を一緒にして『北海道まるかじりパック』なんて売り出しませんか。別々に売るよりも、きっと売れると思います。消費者も喜ぶでしょう」 ◇ ◇ ◇ 斜里町の組織にしても別海町の木を植える運動にしても、漁業や農業を振興 し、地域をより良くするにはどうするか、という発想が原点だと思う。そのために漁業者と農業者が接点・交流を求めはじめている。地域住民としては当たり前の発想だが、系統や行政の中にはほとんどなかった。 4 若い人々の意識調査 それでは漁業者や農業者は実際にどう考えているのだろうか。もし仮に漁協と農協との合併や提携について提案があれば、どういう反応を示すだろうか。そこでアンケート調査を行うことになった。 筆者が本研究報告の冒頭の事例調査で歯舞漁協を担当したこともあって、調査対象は歯舞漁協ならびに同じ根室市内にある根室農協の2組合とした。また将来構想を考えると いうことで若い世代の意識が知りたいため、青年部員を対象とした。 歯舞漁協を選んだのは、筆者の経験上、組合員が勉強熱心で向上心は全道の トップレベルにあると感じていたこともあげられる。また根室農協は、将来的に別海町にある4つのJAが合併し、その後に合流合併するとの構想があるが、別海町の4JAとは行政区域がちがう上に、半島部分に住む組合員も多く、本所との距離など地理的条件がかなりちがうという事情があった。 1999年4月に別紙(資料1 、2 )のような内容でアンケート調査を行った。対象は歯舞漁協の青年部員10 6名のうち、役員などを中心に40名、根室農協は39名の青年部員全員。アン ケート用紙に、切手を貼った返信用封筒を添えて送付した。 回答を得たのは漁業者が8人で回収率は20%、農業者は10人で回収率は26%、双方を合わせた回収率は23%だった。結果の詳細は別紙 のとおりだが、最初の設問@農協と漁協の合併や提携について可能性として 「検討する」と答えたのは12人で、「検討に値しない」と答えたのは6人。「検討する」が「検討に値しない」の2倍に上った。 @で「検討する」と答えた人に問う設問Aでは、12人のうち「合併」が良いとしたのは4人、「固い提携」が2人、「緩やかな提携」が6人だった。 いきなりアンケートで合併・提携について訪ねられたにもかかわらず、「合併」と答えた人が農業者1人、漁業者3 人の合計4人もいたことに注目したい。漁業者にいたっては8人中3人が「合併 」と答えたことになる。 信用事業や共済事業の効率化のために系統をどこに統一するかという設問B で、まず信用事業については、農業者は「どっちでもいい」と答えた人が半分の 5人、「北信連(JAバンク)」と答えた人は4人、「条件による」が1人でその条件とは「負債高と貯蓄高のバランスによって」とあり、金融機関の健全性で 選択することだと解釈される。 漁業者では「信漁連(マリンバンク)」と答えた人が過半数の5人で、「どっちでもよい」が2人、系統外の「北信連」と答えた人が1人だった。結局、 信用事業について自分の系統を支持したのが農業者4人、漁業者5人で合計9人 、それ以外が9人で、こだわりは半分程度といえる。 共済について、農業者では「JA共済」が6人、「どっちでもいい」が4人 、漁業者では「どっちでもいい」が4人、「漁協の共済」が3人で「条件による」が1人。その条件とは「それぞれの良い共済事業を集約、調整して全く新しい 事業を展開する」だった。 共済事業で自分の系統にこだわったのは農業者6人 と漁業者3人の計9人で半数だった。「それぞれの良いところを集約して新しい事業を行う」という意見は建設的であり、もし農協または漁協の共済に一本化されることになった場合は必ず課題に上るはずだ。 こうした系統の一本化についての意識で、信用、共済の双方を比較すると、農業者は信用よりも共済で自分の系統に対するこだわりが強く、漁業者は共済よりも信用にこだわりが強いことが見て取れる。しかしいずれもサンプル数が少なく、この結果だけでいろいろ論ずるわけにはいかないことのも確かだ。 合併や固い提携によって考えられる新しい展開についてたずねる設問Cでは 、「農業と漁業が一体化することで環境保全がやりやすくなる」が11人と最も 多かった。次は「牛乳・畜産物と水産物とを組み合わせた新しい加工品が商品化できる」が10人、「海から揚がるヒトデなどを畑の肥料にする、漁家が農家から土地を借りて作業をする、これまでの牛乳、水産物だけでない新しい生産物を 開発するなど個々の農家と漁家の経営面で新たな展開が期待できる」が9人、「地域住民が一つの組織に集うことで地域の活動がしやすくなって活性化する」が7人、「市役所など行政その他との連携がスムーズになる」が4人、「組織が強 くなることで今後の高齢者問題など社会問題にも対処しやすくなる」が2人だっ た。「その他」の記述が一つあって「おたがいのひまな時期の仕事の手伝い」だ った。 それでは具体的に農協と漁協の合併あるいは固い提携の話が持ち上がったと仮定するとどうするか、という設問Dでは、「賛成」と「どちらかといえば賛成」を合わせて10人と過半数を超えたのに対し、「反対」「どちらかといえば反対」は4人にとどまった。「合併や提携する相手による」も4人だった。また個別のアンケート用紙を見ると、最初の設問で合併や提携について「検討に値しな い」と答えた6人のうち2人がこの設問では「どちらかといえば賛成」と答えている。アンケートが進むに従って考えが変化したと思われる。 農水産業協同組合法といった新しい法律が必要か、という設問Eでは「賛成 」がちょうど半分の9人、「反対」1人、「分からない」が8人だった。 その他の思うことを記述してもらう設問Fでは、農業者4人の記述があり、 漁業者はなかった。 「根室管内ーJAで最近話が進んでいます。また根室市内4 漁協の合併を早くすすめた方が良いと思われます。まず互いに力を強めましょう 。ゆるやかな提携はすぐにでも可能だと思います」(Aの設問では「ゆるやかな 提携」Dでは「反対」) 「まったく新しい考えにビックリしています。なんと目先の小さかったこと。21世紀に生まれ変わる協同組織を応援します」(Aで「 固い提携」Dで「賛成」) 「何故、農協と漁協が合併する必要があるのか。管内の合併さえスムーズにいかず、一部の地区の反対があり、別海では合併の話は振り出しにもどったのに、この問題はちょっと無理があるのではないか」(@で「 検討に値しない」、Dで「どちらかといえば反対」) 「どちらも落ち目なので良 いとも悪いともいいにくいです」(Aで「ゆるやかな提携」Dで「合併や提携す る相手による」) 以上の調査結果から次のようなことが得られた。漁協と農協の合併・提携というきわめて唐突なテーマのアンケート調査で、 具体的に合併または固い提携の話が持ち上がったとすれば何を選択するか?とい うこれまた唐突な仮定だったにもかかわらず、半分以上の人が賛意を示し、合併 のための法律づくりについても理解を示したことは注目できよう。またその場合の系統の統一については、自分の属する系統にこだわらない人がかなりの割合に上ることが分かった。 合併や提携による新しい展開については、○環境保全に有効、○農産と水産を合わせた新たな加工品の可能性、○個々の経営面でメリットがある、といった回答を半数以上の人が示した。若い世代がそれだけ環境問題や個々の経営に危機感を抱き、新たな展開を求めている現れといえよう。 ただしサンプル数がきわめて少ないため、統計学的な意味は薄く、比較的意識の高い青年を対象にした意識調査の結果であると理解したい。 5考察 アンケートは歯舞漁業と根室農協の青年部員を対象にし、回答者も自分たちの置かれている環境を前提に答えたはずだが、漁協と農協の合併または提携につ いては根室に限らず道内各地でさまざまなケースが考えられよう。 同じ根室管内の羅臼漁協の理事者に聞いた話では、羅臼町内には酪農家がいて農協を組織しているが、漁協では「どうぞうちの金融を使ってください」と言 っているという。確かに町内には主に酪農を営む組合員16人の羅臼町農協があ り(1996年北海道農協年鑑=北海道協同組合通信社発行より)、隣の標津町農協の本所とは50`も離れている。 留萌管内の漁協は将来的に広域合併する構想のようだが、北部の漁協は遠く離れている。天塩や遠別は留萌よりはむしろ稚内に近く、留萌から約80`、稚 内から約70`の距離にある。天塩漁協は組合員43人で販売額5億円、遠別漁協は29名で5億円(1998年水産関係人名鑑=水産北海道協会発行より)。 しかしこの近辺には組合員552名(准組合員含む)年間販売高30億円の遠別農協や組合員392名(同)年間販売高24億円の天塩農協が存在する(199 6年北海道農業年鑑より)。 そのほかにも道内には同じような地理的条件の漁協、農協がたくさんある。 こうした地域では漁協と農協が合併または提携しながら、お互いの便宜をはかっていくことが可能になる。 これまでは漁協系統、農協系統とも、全道の漁協や農協をいくつに減らすと いった系統内の数値合わせに終始してきた。しかし地域の企業家・経営者であり生活者である漁業者や農業者個々の観点からすれば、広域合併という系統の方針こそが唐突ではなかったのか、という気がしてくる。 このまま今の方針を貫いていけば、広域漁協が発足する一方で、合併に合意できなかった漁協が取り残され 、系統からも行政からも冷遇され自然消滅を待つままになってしまう、という事態にもなりかねない。 やはり漁協と農協との合併や金融部門を分離しての単独存続など、地理的・ 歴史的背景や住民感情など地域の実情に合わせたさまざまな選択肢があるべきだ と思う。その上で単独存続が選ばれれば、それはそれで尊重されるべきだ。 もし漁協と農協の合併を選択すれば、今の法体系ではどちらかに吸収される ことになる。今回のアンケートで半数が支持し、反対は少数だった農水産業協同 組合法(農水協法)という新たな法律が制定されれば、合併後の組合の性格も確かなものになるはずだ。行政にあっては各部を横断し、地域の発展のための相談役となるような部署が必要となる。またアンケートの発言であったような、農業共済と漁協共済の良いところを併せ持つ商品が開発されることも必要となってくるだろう。 |
資料1 アンケート調査のあいさつ文
アンケートのお願い 北海道漁 協研究会
漁協の合併をテーマに研究しています 突然で失礼いたします。私どもの北海道漁協研究会は平成8年に設立された 任意の団体です。 北海道の漁協の現状を分析し、今後の方向性を考えていこうと いう趣旨で設立されました。 大学教官、大学院生、道庁・水産庁・開発局・漁業 団体の職員、ジャーナリストなどが個人的に参加し、2ヶ月に1度の勉強会を中 心に活動しております。 平成10年からはホクサイテック(北海道科学・産業振興財団)より補助金 を受け、2カ年をかけて漁協の合併をテーマに調査・研究を開始いたしました。 農協との合併もテーマの一つです その研究テーマの一部として、漁協と農協の合併や提携について考えること になりました。 現在、農協、漁協とも市町村を越えた広域合併が一つの流れとな っております。 根室地方においては将来構想として、農協では別海町内の農協が 合併したあとでの根室農協の合併参加、漁協では根室市内4漁協(落石、根室、 歯舞、根室湾中部)の合併があると聞いております。 しかし全道的に見てなかなか合併は進んでいないのが現実です。 進まない要 因は、組合の財務状況に差があって財務の悪い組合とは合併したくないなど様々 でしょうが、地域特性が失われることへの不安も一つの要因ではないでしょうか 。 広域合併になると、組合員が多くなって組合員同士の意志疎通が難しくなる、 地域の核としてあった組合が消える、本所が遠くなって便利が悪くなる、市や町 など行政との協調性も薄くなる、といった弊害が考えられるところです。 アンケートはあくまで意識の調査です しかし金融を中心に農協・漁協の経営を取り巻く環境がますます厳しい時代 を迎え、このままの姿で将来にわたって組合経営を継続していけるかといえば何 とも言えないところです。 そこで地域性を損なわず、しかも金融を中心にした財務の強化策として考え られるのが異業種組合、具体的には農業と漁協との合併あるいは提携です。 今回 のアンケートでは根室農協と歯舞漁協の青年部員それぞれ約40人を対象にして 調査票を送らせていただきました。 このアンケートはあくまでも意識調査であって、実際に進められている合併 構想に介入するものではありません。楽な気持ちでアンケート項目にお答えいた だければ幸いです。 農協と漁協との合併は全国的にもほとんど例がなく、法・制度も整備されて いませんが、もし一つの選択肢として農協と漁協の合併が可能であれば、地域に よっては選択されるケースが出るものと思われます。 特殊な例ですが最近新潟県 の離島、粟島で粟島浦村農協と漁協が合併し、粟島浦漁協となった例も起きてお ります。この場合は農協がたちゆかなくなって漁協に吸収されたようです。 むずかしいと思った質問はどんどん飛ばしていただいてけっこうです。アン ケートへのご協力をよろしくお願いいたします。書きたいことがたくさんある方 はアンケート用紙の裏面または別紙を利用してください。 (以下連絡先など略) |