北海道わが町自慢
たらこ(古平町)


写真:古平町水産加工業協同組合


 函館本線余市駅から約20キロ。トンネル崩落事故で多くの犠牲者を出した豊浜トンネルを抜けると古平町だ。
 「たら釣り節」の発祥の地としても知られている。
 積丹半島の中央部に位置し、魚介類の宝庫ではあるが、近年は日本海全体の資源の減少で水揚げの総量が低迷している。ところがタラコの生産だけは全道一の生産量を誇り、品質にも高い評価を得ているのだ。
 タラコはスケソウダラの卵を塩蔵加工したもの。赤く着色することから紅葉子(もみじこ)、紅子(べにこ)などとも呼ばれている。もともとこの前浜ではスケソウダラが獲れて、加工も盛んだった。
 「漁業と加工の両方をやっていて、卵はタラコに、身は棒干しなどに加工していました。でもだんだんとスケソが獲れなくなり、タラコの加工一本になってきたんです」
 古平漁港に隣接地に工場を構える兼吉吉野商店の吉野平康社長が振り返る。
 スケソが獲れなくなったにもかかわらず、加工はタラコだけになった? 
 じつはここで生産されるタラコの大半は、アメリカやロシアからの輸入物が原料。冷凍品を解凍して加工している。
 「解凍や加工方法では最初苦労しました。塩分や色を全体に浸透させるにはどうするか、など。粒々感が出なくてアンコを食っているようだ、と言われたこともありました。その後、冷凍や解凍の技術や機械が進歩して、生の原料とそれほど変わらない製品ができるようになりました」(吉野社長)
 しかし輸入原料を使うとなれば、ほかの産地と条件は変わらない。
 どうして古平で生産を伸ばすことができたのだろうか。それには原料輸入を一手に担う協同組合の存在がある。
 「冷蔵庫をつくったことで組合が原料の調達にも乗り出しました。現在では海外市場から買うだけではなく、漁船一隻分を直接買ったりしています。そのために独自で加工の技術者を派遣しています」
 と古平町水産加工協同組合副参事の中村順さん。アラスカ産はアメリカのシアトル、ロシア産は何と韓国の釜山に市場ができているそうだ。
 また組合では組合員である加工業者が生産したタラコの大半を販売している。こうした活動をしている加工組合は道内でここだけだという。
 こうして築かれてきた古平ブランドいえども安泰ではない。原料の高騰という難問に直面している。
 ライバルは福岡の辛子明太子。ブランド維持の苦労に終わりはない。     
THE JR Hokkaido 2001年11月号


良いものを 各地から