北海道わが町自慢
きのこ(愛別町)


写真:JAあいべつ


「きのこの里」愛別町。旭川から石北本線で50分ほどのこの町は、北海道を代表するきのこ産地として知られている。
 大雪山のふもとに位置し、さぞかし山の幸のきのこがたくさん採れるのだろうと思いきや、さにあらず。農家が栽培しているものなのだ。
 きのこは本来、馬ふんを肥料に育つマッシュルームを除いて林産品に分類されるそうだが、ここでは農産品。近年目立つブナシメジなどは苫小牧などの工場で生産されており、もはや工業製品でもある。
 愛別町内の約60戸の農家が生産者。エノキダケ、シイタケ、マイタケ、ナメコ、ヒラタケなど、一戸が一品種を栽培している。昭和50年前後に水田の減反を機に始まったが、今ではきのこ農家はすべて専業だ。
 ただしこの数年、食品全体に及ぶ低価格化がきのこにも及び、販売額が伸び悩み、逆に減少傾向に陥っていた。ところが昨年はまた盛り返したという。
 「5年ほど15億円を割る状態が続きましたが、昨年また17億円に戻しました。全国的な生産調整が、価格の維持に結びつきました」
 とJAあいべつきのこ課の多羽田裕一さん。大産地である長野県などでの減産が功を奏したとの見方だが、この農協での復活戦略も見逃せない。
 もともときのこは秋から冬にかけて需要が高まり、夏場は極端に落ち込む。しかしこれまではしゃにむに夏場でも同じように栽培し市場に出荷していた。サラダに使うなど、レシピの提案も重ねてきたが、いかんせん消費は頭打ちだった。
 そこで思い切って夏場の出荷を減らしてしまった。その代わり秋からの消費本番では生産量を増やした。ただし農家個々の施設や労働力に限界があり、増やせといって簡単に増やせるものではない。
 そこでエノキダケやナメコの培養センターを建設し、そこで一括培養し、農家はそれを育てるだけにした。その結果、需要期に生産量を増やし、品質も向上したという。
 販売にも力が入った。札幌に職員を常駐させているほど。道内の農協で職員をほかの地に通年駐在させるのは異例のことだ。
 9月には町内で恒例の「きのこの里フェスティバル」が開かれ、今年も一万人もが訪れる盛況ぶりだった。
 愛別町の表看板「きのこの里」はその時々の人々が何度も磨き直すことによって、その輝きが保たれてきたといえる。    
THE JR Hokkaido 2001年10月号


良いものを 各地から