北海道わが町自慢
キャベツキムチ(南幌町)


写真:南幌町農産物加工センター


 南幌町は札幌の東方20キロほどにある農業の町。江別駅や北広島駅からクルマで十数分という便利の良さから、近年はベッドタウンとして人口を増やしてきた。
 そんな町の特産物がキャベツ。水田減反の転作作物だ。ここは南方向と北西方向には山などの障害物がなく、太平洋、または日本海まで風が通り抜ける。真夏でもあまり気温が上がらず、キャベツ栽培には最適だった。
 現在は減少したが、一時は作付けがどんどん伸び、道内では伊達市に次ぐ第2位の生産量を誇るまでになった。
 そのころの一村一品運動。しかし特産物ののキャベツはあっても、誇れる逸品がない。町内の町おこしグループが顔をつきあわせて新たな名産品づくりに知恵を出し合っていた。
 またそのころは88年ソウル五輪を契機にした韓国ブーム。人口が日本の3分の1しかない韓国がメダルの数では倍以上。そのパワーの秘密は? キムチだ!
 キャベツとキムチが結びついた。いたって単純ではある。でも思いつきだけで町が誇れる逸品が生まれるはずもない。
 94年、相談を受けたのが、札幌で約十年間キムチ製造に携わっていた村松武司さん。焼肉店向けの本格的なキムチをつくっていた。
 「私もいろいろ食べ歩いていましたが、キャベツのキムチは見たことも聞いたこともない。でも試作してみると、意外に短時間で成功することができました」(村松さん)
 村松さんがいた工場で生産が始まり、南幌町の名産品として世に登場する。
 普通の白菜キムチとちがい、浅漬けのように音が出る歯ごたえ。加えて味は濃厚で辛い。キャベツを使うことを除けば、韓国伝統の製法だ。二種類の唐辛子とニンニク、しょうが、イカの塩辛、オキアミの塩辛、乾燥エビ、リンゴ、長ネギなどで漬け込む。
 村松さんによれば難しいのはキャベツの塩漬け。塩加減をぴったり決めないと修正が効かない。ただし難しいのはそれだけで、あとはキムチ本来の作り方を守るのみ。
 98年には町おこしグループと町、JAなどが出資して(株)南幌町農産物加工センターを設立、村松さんがセンター長に就任した。加工施設「ぽけっとハウスなんぽろ」でキャベツを中心に白菜、大根などのキムチを製造している。
 またキャベツの粉末を錬り込んだ「なんぽろ冷麺」を開発、キムチに続いて、道の加工品フェアで優秀賞を受けた。キャベツと韓国へのこだわりが新たな逸品を生み出している。 
THE JR Hokkaido 2001年9月号


良いものを 各地から