THE JR Hokkaido(JR北海道車内誌)2001年2月号
 イラスト 中舘侑子さん

【コマイ】

 釣りや底引き網などで年中獲れているコマイだが、それでもやはり冬の魚だ。名前自体はアイヌ語から来ているそうだが、漢字は「氷魚」や「氷下魚」が当てられた。
 氷が張った沿岸の海や汽水の湖にいて、むかしから氷に穴を開けての穴釣りや氷の下に設置した小さな定置網で獲られたからだ。
 カンカイとも呼ばれる。寒海という当て字はいかにも北海道の冬の海というイメージ。こちらはサハリンのニブヒ(ギリヤーク)民族の言葉から来ているらしい。カラカラに乾いた乾物をカンカイと呼ぶことが多いから、カンカンに硬い雰囲気もこの語感には含まれている気がする。
 マダラやスケソウダラと同じタラ科の魚で、成長が早く1年で20センチにもなる。2年目の冬には25〜30センチになって産卵する。冬になると沿岸に寄ってくるから、それを定置網で一網打尽にすれば、港はコマイだらけになる。
 北方領土の国後島を間近に望む野付半島の付け根にある小さな港町の尾岱沼あたりがコマイの大産地。ときとしてとんでもない大漁をもたらす。
 1日に2千トンも水揚げされたことがあったそうだ。20トントラックで100台。2トントラックなら1000台分だ。それがたったの1日で揚がってきた。
 港だけでなく、高台にある公営の駐車場もコマイが埋め尽くし、港町の人が総出でも足りずに、近隣から応援に駆けつけた。 何ともダイナミックで不思議な魚だ。
 硬い乾物の皮を取り、身をほぐし、七味、または一味を加えたマヨネーズにつける。これがウイスキーなどによく合う。皮はライターでちょっとこがせばおつな味。 最近人気の生干しコマイも酒の肴に最適だ。炭火で焼いて中の汁が垂れ始めたころにいただく。淡泊で素直で上品な味。それに安いときている。こちらは日本酒でもビールでもなんでも合う。
 バーやスナックでコマイをつまみながら洋酒を楽しむもよし、炉ばたで丸干しコマイにかじりつきながら、日本酒やワイン、ビールをあおるのもよし。
 その向こうに見えてくるのは寒海や氷…。北海道の冬の海そのものだ。      

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